チームをドライブさせる企業理念の作り方 – 2016年 4月7日


ランサーズではこの一年でスタッフ数が80人から150人近くになり海外子会社も設立するなどチームが急拡大していく中で「Lancers Way」という企業理念をつくりました。

「企業理念で飯が食えるの?」「企業理念って意味あるの?」「そもそもどうやって作るの?」「そもそも理念なんてない」など色々な意見がありますが、個人的にはビジョンなどの企業理念はあったほうがよいし武器になると考えています。

ただ、理念でチームをドライブさせているケースと理念があってもドライブできていないケースで明らかに違いがあり、自分なりの考えをまとめてみました。

企業理念ってなに?

企業理念には一般的に「ミッション」「ビジョン」「行動指針」があります。

ミッションとは、その会社がなぜ存在するのか。何を社会に対してなしとげるのか。といったような会社が生まれた目的や使命です。なので、ミッションは基本的には変わることはありません。

ビジョンは、そのミッションを持った上での具体的な目標や会社としてのゴールであり夢です。なので、ビジョンを実現した場合に、ミッションに立ち返ってビジョンを変更するというのはありえることです。

行動指針は、ビジョンを達成するために必要なそのチームの価値観や考え方、姿勢です。意思決定で悩んだ時の判断の拠り所になるようなものです。

このようにミッション > ビジョン > 行動指針と依存関係があり、具体的にランサーズでいうと、ミッションは「個のエンパワーメント」です。ビジョンは「時間と場所にとらわれない新しい働き方を創る」。行動指針は「ランサー第一主義・ポジティブ思考・チャレンジ・やり切る・自分ごと化・チームランサーズ・誠実」と7つあります。

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あると何がよい?

・ 筋肉質のスピードアップ

チームのスピードがあがります。チームの人数が少なかったりすると毎日コミュニケーションをとれ考え方も共有されていて、どのゴールに向かうのかが明確です。人数が多くなると、全員とのコミュニケーション量は相対的に減っていきます。当然、自分周辺のやっていることは分かっても、それ以外はわからない。全体として方向があっているのかもわからなくなる。

チームの人数が少なかった時はリーダーが意思決定していたところから、それぞれのバックグラウンドや背景によって、色々な判断がされる。A部門では良いというものがB部門にいくとダメとなる。判断軸がブレる。そうすると批判されないような安全な判断にかたよったり、説明のための資料を大量につくりだす。そうやってスピードが下がっていきます。

もし、企業理念が明確にありチーム全体に浸透していれば、どの部門にいっても同じ判断か、多少違ったとしても、それがどういう基準で判断されたのかの軸(例えば行動指針)があるので皆に説明責任を果たしやすい。自分達がなにもの(ミッション)で、どこに向かうのか(ビジョン)があるため、事業の方向性もあわせやすく、スピードをあげていくことができます。

・新しい仲間の合流しやすさ

会社が何のために存在し(ミッション)、何を目指しているのか(ビジョン)、そのためにはどういう軸で判断するのか(行動指針)が入社前から明確にわかるので、入社前から自分とのフィット感が無い会社よりイメージしやすくなります。ただ企業理念と実際の社内の状況が異なっている場合などは逆効果にもなりえます。

創業時ではなく中途で入る場合に、通常既存メンバーに比べて「空気を読んだり」「この会社らしさ」を理解するのは業務を理解するより時間がかかるものですが、企業理念にそって現場も経営もすすんでいくので、なぜその意思決定がされたのかも企業理念という教科書があるため、キャッチアップが早くなります。

評価制度にも企業理念が加わってくることが多いと思いますが、何をすればその会社では評価されるんかという見えずらいルールも明確になり、個人個人の価値観は多様でも、チームとしては同じゴールと価値観でドライブできる仲間をつくりやすく会社も個人もとなります。

・武器となる文化

会社にはそれぞれ事業があります。サービス・商品があります。事業やサービスというのは究極的にはすぐに真似されます。どんなに日本で最初のサービスや業界をつくっても、よい事業やサービスであればあるほどそうであり、差別化は会社として当然していくものの一般的には事業は可視化され見えているため、まねしやすい領域です。

ただ、企業理念が浸透していけばそのチームには「文化」ができてきます。文化というのは決して真似することができません。強い文化の会社といえばリクルートさんが有名ですがリクルートさんのやっている事業は真似できますが、リクルートさんの企業文化を真似することは中々難しい。文化を真似するというのは自社が自社でなくなることであり、不可能に近いことです。

そんな自社オリジナルの強い文化があれば、リクルートさんがそうであったように、時に事業が困難であっても文化によって新しい事業ができたりV字回復したりと、目に見えない強烈な文化で事業成長して結果ビジョン実現に近づくことができるのです。

逆にデメリットはないの?

・ 経営コミット

あまり大きなデメリットがあるわけではないと思いますが、それでもいくつかあります。一つは、経営チーム自体のコミットが重要になってくるので、経営チームの時間(マインド含む)を大きく使うことになります。特に作ったあとの最初のころは浸透にも時間をかけなければいけないので、相応の時間を投資してやる覚悟がひつようです。

・ 仲間の入れ替わり

価値観を曖昧にしていた時期には表層化していなかった問題が噴出するかもしれません。企業理念を明確にすると自社のミッションやビジョンが明確かされます。行動指針も明確になり、それに従って進んでいきます。そうなると、改めて考えると自分はこのビジョンを実現をしたいと思わない、自分はこの行動指針を実践することができないという風に考えるメンバーがうまれるかもしれません。大変悲しいことではありますが、企業理念を明確にすると決めたら新陳代謝が起こることを覚悟しないといけません。

どのステージでつくる?

創業当初から企業理念をつくってもよいと思いますが、個人的にはそこに時間をかけるよりもサービスなりに時間をかけたほうがよいと思います。なぜなら創業当初は誰しも起業する時の強い思いがあり、言語化していないだけである種のミッションやビジョンを自然発生的にもっているからです。

創業当初は人数も少ないことが多く、明確にしなくても社長から多くのコミュニケーションを結果とることになるので企業理念が当初は無くても問題にはなりません。

ただ組織の人数が30〜50人を超えたあたりに起こりがちな「何か今までのスピード感と違うぞ」「自社らしくないことをいうメンバーの出現」「外ではなく内に向かい始めている」と感じたら、作るタイミングかもしれません。

創業メンバーや強力なマネジメントチームがいる場合は、社長の分身として機能するため30~50人くらいでは、そういう風には感じない場合もありますが、そういうケースでも100人を超えたくらいのタイミングでは必要になってくることが多いようです。

企業理念を作る手順

・ よくない作り方

まず最初に、よくない企業理念の作り方。まったく社長がコミットしておらず「作ること」がゴールになっており、例えば外部のコンサルに依頼してできたものをそのまま使ったり、他社の理念を丸パクリしていたり、メンバー皆の多数決や合議制で作った平均的な理念のケースです。

このような場合、理念こそは作ったものの誰よりもコミットして浸透をさせないといけない社長自身が腹落ちしていないので、当然のように日常で利用されることもなく、壁に貼ってあるだけの状態になり、使わない理念が出来上がり、むしろ理念と逆に進んでいたりして無い方が良いともなりかねません。なので、社長がコミットして作る。これが大前提です。そのための作り方は2通りあると思います。「単独で作る」と「メンバーと一緒に作る」です。

・ 単独で作る

50人くらいの規模であれば「単独で作る」という方法をおすすめします。特にミッションやビジョンはどんな規模であっても社長の仕事として考え抜くべきです。行動指針などは、過去の自分たちの成長したきっかけやその時に大事にしていた価値観。いつも困難や可能性にぶちあたったときに、どういう判断基準で意思決定してきたのか、などを思い出しながら、周囲にも自分や自社というのがどういう人・会社なのかヒアリングなどしながら書き下していきます。

その時に、できれば自社らしいオリジナリティのある言葉であったり、じっさいに日常で使っている言葉であれば、より浸透しやすくよいと思います。企業理念を会社名を隠した時に、あ、これは自社っぽいなというものができれば素晴らしく、逆にありきたりになっていると浸透しにくいかもしれません。

・ メンバーと一緒に作る

100人を超えた規模になれば「メンバーと一緒に作る」ほうがよりよいかもしれません。これは多数決を取るというよりも、作成のプロセスに積極的にスタッフにも入ってもらうということです。そうすることで、そのプロセス自体によって社長や役員とのコミュニケーションが増え、結果的に企業理念が浸透することにもなりますし、スタッフ自身が理念の大切さであったり、自分ごと化しやすい状態をアシストできます。

もちろん、ベースは社長自身で案などは考えていったほうがよいですが、悩ましい部分は皆で議論してアイデアをもらったり、スタッフの皆に作成をサポートしてもらって一緒につくっていくイメージ。作詞作曲のベースは社長がして、編曲は皆でするようなイメージでしょうか。

その時に大切なのは、どうしても意見が衝突することがあると思います。例えば「スピードなのかクオリティなのか」。その時に安易にどちらかにするというよりも、それぞれがどんな体験や思いから「スピードが大事」「クオリティが大事」といっているのかを、しっかりとお互い話し合うことが大切です。話し合う中で自社のビジョン実現のためにはどういう価値観でのぞむのかを決めてください。どうしても決まらなければ、最後は社長などのリーダーが皆の意見も汲み取りながら決めてしまってもよいと思いますが、大事なのは皆とプロセスをしっかりと共有し言葉だけじゃない思いや背景もしっかりと共有することだと思います。

ちなみにランサーズでは、企業理念をつくるのに3ヶ月の時間をかけました。毎週1回、メンバーの任意参加ではありますが毎週木曜日に2時間「Lancers way project」のディスカッション時間を用意して合計で8回開催されました。それと並行して社長である僕自身が全員の声を聞くために100人1on1プロジェクトを実施して毎週5人くらいと3ヶ月1on1をして100人との時間をつくりました。それらの活動を通して、結果全員で「Lancers way」ができたのでした。

一番大事なのは運用そして浸透

どのタイミングで作るのか、どういうプロセスで作るのかという「作る」にフォーカスをしましたが作ることの重要さは2割くらいであり8割は運用によって、どれだけ浸透できるかが決まってしまいます。

・ 社長・経営幹部の率先垂範が最重要

企業理念をつくる=企業理念でビジョン実現を目指す、企業理念で事業をドライブすると決めたことに等しいと思っています。そう意思決定したならば、まず社長や経営幹部はメンバーのだれよりもビジョン実現にまい進すべきで、だれよりも行動指針を率先垂範しなければなりません。社長や経営幹部がリーダーとして率先垂範していくことが浸透において何よりも大事。行動で示すのはもちろんのこと、しっかりと企業理念という軸にしたがって日常の会話や会議でも発言しフィードバックしていくことが求められます。

例えば、特に企業理念をつくった初期であれば、メンバーへのフィードバックに対して単純によかった、とか、もっとこうしたほうがよい、というフィードバックではなく「行動指針のxxという価値観でいえば、xxというようなことが大事であり、そういう風に考えると今回のxxという判断し結果xxとなったのは素晴らしい」みたいに行動指針というベースの価値観でフィードバックしていくイメージです。

・ マネージャー基準の一つに

逆に言うと、経営幹部やマネージャーにはビジョン実現・行動指針を体現しメンバーに浸透をはかることができる人物を選ばないといけません。スキルと能力は非常に高いが、ビジョンとは逆のことをしていたり、行動指針を体現していない人をマネージャーなどに抜擢することは決して行ってはいけません。もちろん、今は一部はできていないが将来的な成長を加味して当人にもフィードバックをしたうえでチャンスを与えるというのはありえる選択だと思います。

・ 評価にも取り入れる

評価の1つの指標にもいれている会社が多いように思います。例えば、半期評価の中の30%くらいは行動指針にしたがったバリュー評価を加えるというような形です。行動指針を評価するためには、マネージャ自身も行動指針を深いレベルで理解する必要があり、メンバーに対してもしっかりと行動指針に従ってフィードバックをできる機会にもなるので、個人的にも評価の中に加えていき、じっくりと向き合うことはおすすめしています。

・ 日常の中にも

ランサーズでいえば、浸透策として様々な試みをしています。例えば、各自持ち回りで毎朝90秒スピーチをしていましたが、その内容を「Lancers wayを体現している他のメンバー紹介」に変えたり、会議室の名前をすべて「行動指針」の部屋名にしたり、自社の社史的な意味合いも含めて「Lancers way」という本を製本したり、いろいろと試行錯誤をしています。GMOさんは社長を筆頭に毎週企業理念を全員で読むということをしていたり、各社さまざまに自社の文化にあった方法で日常の中に取り込めています。

・ 企業理念もPDCA

非常に長いエントリーになってしまいましたが、ただ企業理念自身もPDCAをまわしていくべき存在だと思います。ある時点では大切だった価値観も、企業の成長にしたがって古くなってしまう場合もあると思います。ランサーズも過去2度ほど行動指針の文言はかわっており、そのたびに進化していっています。ぜひ各社・各チームに明確なミッション・明確なビジョンが必要になったら、自分たちらしいやり方でつくり、しっかりと運用して浸透して強い文化をつくっていければ素晴らしい企業理念となることと思います。

ランサーズでもさらなる強い文化と企業理念のPDCAをまわしていきます。

強い文化を作る仲間を募集

ランサーズでは、一緒に「時間と場所にとらわれない新しい働き方」というビジョンを実現し「個のエンパワーメント」というミッションをむねに、強い文化を一緒に作っていくプロダクトマネージャー・エンジニア・事業開発・インターンなどのメンバーを大募集しています!ランサーズのオフィスちょっとみてみたいな!でも全然大丈夫ですので、お気軽にご連絡ください!