ベンチャーOKR失敗あるある – 2018年 6月27日

winセッション

OKRを使ってますか?
OKRって聞いたことありますか?

OKRは目標を管理する最先端のフレームワークで日本でも多くのスタートアップで使われています。

ランサーズでもOKRを導入しましたが、初めてOKRを導入する企業が陥るOKR失敗あるあるに見事にハマり導入は失敗に終わりました…。ただ、失敗を生かしたOKRサイクル2回目はかなりうまく運用することができました。

ちょっとしたコツと考え方でOKRはうまくいくもの。まだまだランサーズも運用途上でありますがOKRにチャレンジするすべての企業の運用の参考にまとめました。

あるある①:OKR導入時点ですでに勘違いしがち

多くの企業がOKR導入で失敗するのには見事なまでに共通項があります。

まずOKRというカッコイイ言葉が導入すれば後はうまくいく銀の弾丸のような印象を与えるからです。残念ながらOKRは導入しただけでは絶対にうまくいきません。大切なのはOKRそのものよりもOKRを導入する企業のビジョンや思想、そこに基づく全社を挙げたコミットメントといった「運用が命」です。

ランサーズでも当初はOKRを導入することがゴールになっており、あとは勝手に達成する雰囲気になってしまっており、進捗の追い方もいつの間にかOKRではなくMBOになっていました。振り返るとOKRというのはどういう性質のものなのかをリーダーである社長が腹の底から理解してチームにも共有できていなかったなと反省しております。

あるある②:OKRなのにMBOやKPI管理に陥る

OKRはObjectives and Key results(目標と主な結果)の略で、文字が示す通りの目標を達成するための手法です。目標達成の方法としてはMBOが有名ですし、目標に向けた数値管理としてKPIという言葉を聞いたことがあると思います。

KPIは経営重要指標そのものであり目標達成の方法ではなく単純な指標のことなのでOKRとは趣旨が異なりますが、MBOについては目標達成のツールとしては非常に似ています。ただし、OKRとはアプローチが全く異なります。

MBOは目標から打ち手に分解して打ち手(タスク)を管理するのに対して、OKRは達成確率50%の非常に高い目標設定をして、その目標を達成するための大胆な打ち手「ムーンショット(P1)」を設定し、毎週大胆なムーンショットP1を打てているかの進捗を追うという目標管理システムです。MBOが目標に対する打ち手を網羅的に管理するのに対して、OKRは重要なことのみにフォーカスします。

MBOがダメでOKRが良いということもなく、それぞれ特徴があり会社のカルチャーに合うものを導入するのが良いと思いますが、最初はOKRだったはずが、いつの間にかMBO的な運用になっている企業も多くいます。

そんなOKRは目標であるOと達成基準であるKRを何にするのか、そしてどうやって毎週進捗を追っていくのが肝であり、そこでの失敗を見ていきたいと思います。

あるある③:大胆なOを皆で設定できていない

OKRを導入すると決めたら、まずやるべきは全社のO(ワクワクする目標・スローガン)を設定することです。3ヶ月後にこれが達成できていたらメンバー全員がワクワクするよね!というようなOを設定します。

例えば会議室のシェアリングエコノミーを運営している企業XXXであれば「会議室予約ならXXXだね!と東京スタートアップのスタンダードになっている!」かもしれないし、アパレルのECサイトを運営している企業であれば「来季にリアル店舗を渋谷で展開できるくらいのリピート顧客層ができている!」などかもしれません。とにかくOが実際に実現したら最高!だけど達成確率は50%くらいだな・・・という目標が適切です。

よくある失敗は、Oを達成確率が高いものや今目標においているものを設定すること。それであればOKRで管理する必要はありません。OKRは達成するかしないか五分五分の目標を達成させるためのもの。ぜひ大胆な目標を設定してください。

Oの設定を経営チームだけではなくメンバーも巻き込んで全社をあげてOを一緒に考える機会を持つこともポイントです。OKRは全社OKR・部門OKRを追っていきますが全社OKRがなぜこのOなのかを理解していないと、自部門のOについても理解が弱くなってしまいがちです。だからこそ時間をかけてでも全メンバーにOを考えてもらい理解してもらうことが大切です。


(ランサーズメンバーで次の四半期のOKRを考えている会議)

あるある④:今追っているKPIをKRに設定しがち

KRはOが実際に達成したかどうかを判断するためのリトマス試験的な数字指標です。

KRは明確に達成判断できる指標で多くの場合は数字指標となります。KRは1つのOに対して最大でも3つ程度設定して、KRの数字指標が全部達成していたらOは達成していると言って良いよね?という論理構造にする必要があります。

「来季にリアル店舗を渋谷で展開できるくらいのリピート顧客層ができている!」というOなのであれば、KRは「リピート顧客数が東京都渋谷区で1000人」などかもしれませんし、「会議室予約ならXXXが東京スタートアップのスタンダードになっている!」であればKRは「東京スタートアップ100社の利用率50%超」かもしれません。

よくある失敗は、Oの達成基準かどうかではなく今追っている指標を設定しがちです。例えば「来季にリアル店舗を渋谷で展開できるくらいのリピート顧客層ができている!」というOなのにKRに「売上300万円」と設定したり、「会議室予約ならXXXが東京スタートアップのスタンダードになっている!」がOなのにKRを「XX機能をM/Nまでにリリースする」になっていたり。

今追っているKPIをKRに書いていないことはKPIを追わないということではないので勇気を持ってOが達成しているかどうかを計測できるKRを設定しましょう。


(OKRの例)

あるある⑤:毎週のP1が大胆でなく普通のタスク化

Oを定めて、達成基準であるKRを決めたら、あとはKRの数字を達成するために来週やるべき最も大胆な最優先タスクP1を毎週設定して進捗をおいましょう。

「リピート顧客数が東京都渋谷区で1000人」のKRを達成するためには東京都渋谷の見込み客がリピートになるために来週最優先でやるべきことを設定します。多くのP1は来週すでにやることを書きがちです。「P1:XXXと打ち合わせする」などは一番いけてないP1です。打ち合わせするのは決まっていることであり全く大胆ではありません。

P1を大胆に設定できるチームかどうかがOKR成功のすべて。できるかどうかわからないし、できないリスクが高いけど勇気を持って大きく大胆なP1を設定してチャレンジするのがポイントなので「(XXXと打ち合わせして)提携契約をYYYの条件で合意する」などぜひ大胆なP1を設定ください。

あるある⑥:毎週の全社共有「Winセッション」をやらない

OKRは50%の確率で達成する一方で50%の確率で達成しないので、緊張感もあり未達成というのは大変ストレスです。

だからこそ勇気を持ってP1を設定して、なんらか進捗したなら全員でチャレンジを祝う「Winセッション」によって挑戦を賞賛する場が必要です。ランサーズでは毎週金曜日に全社OKRと部門OKRのP1共有と行動したことによって起こったアウトプットをどんな小さなことでも共有する「Winセッション」を行っています。そうすると達成できなかったけどここまで進捗したというのが目に見えてわかります。

ランサーズも最初はOKRの進捗管理だけをして「Winセッション」をしていませんでした。高い目標なので半分は未達になります。未達が多くなるOKRだけするのは苦しくて段々と追わなくなっていきます。そうならないためにもOKRをするなら、自分たちが実際に行動したことに対する賞賛の場「Winセッション」を用意する必要があります。



(ランサーズWinセッション発表を聞くメンバー。ライブ中継で遠隔でも視聴可能)

あるある⑦:OKRを四半期途中で変えてしまう

OKRは四半期ごとに設定します。

ベンチャーだから四半期同じOやKRを追っていると途中で方針が変わることも当然あります。ただ、そこでOKRを変えてしまうと運用がそもそも回りませんし、OKRっていうのは途中で目標を変えてしまって良いものだ、となり本気で追わなくなります。

苦しくて大変なのですが、そもそもOKRを設定するときに絶対に四半期は変更しないOKRを設定すべきですし、一度設定したOKRは絶対に四半期は変更しないという覚悟をトップ自らが持つ覚悟がなければ、OKRを用いない方が良いかもしれません。

OKRを使うなら四半期は絶対にOやKRを変えないのが基本です。

最後に

OKRは一部のみフォーカスして高い目標を追う思想の目標管理ツールのため初めての場合は馴染めないことも多いかもしれませんが、うまく運用すると皆で一体感を持って、同じ共通認識を持ってビジョン実現に邁進できます。

ランサーズでもまだまだ改善途中でもっともっとよくできると思っています。もっとOKRを知りたいという方は「OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法」という本もオススメです。ぜひ皆でより良いOKR運用をシェアできればと思います。