RSSリーダ関連ビジネスは難しい – 2006年 5月22日

当サイトにアクセスしてくれる人の中には、RSSリーダ経由の方もいる。サイト購読者がウェブの技術やビジネスに興味のある層で、さらに媒体がRSSをデェフォルトで吐くブログであることが更にそうさせているかもしれない。

ただ、最近アクセスログを眺めていると、同じRSSリーダ経由には変わりはないが、「livedoorリーダ」経由が異様に多くなっていることを発見した。


当ブログを開設した昨年12月前後からつい1ヶ月ほど前までは、RSSリーダ経由の中では「Blogline」「Feedbringer」「hatena」などからのアクセスが多かった。

しかし、ライブドアリーダが出来てからというもの、ほんの一ヶ月ほどでRSSリーダ経由の80%程度がlivedoor経由に変わっていた。これほどまで、すばやくツールを変えられた現象は正直あまり体験したことがない。

たとえば、ブログの場合は、データ移行の面倒臭さやURLが変わることによる、アクセス数減少リスクなどから移行するにしても、なだらかラインを描くはずだ。なぜこれほどまで簡単に乗り換えることができたのだろうか、少し考えてみた。

1.OPMLで簡単に移行できる

一番の理由は、OPMLだろう。OPMLを使えば、非常に簡単にRSSリーダで蓄積したお気に入りRSSを簡単に抽出することができる。また、抽出したデータを移行するのも非常に簡単だ。誰でも簡単に移動できる仕様がそうさせているともいえる。

2.リーダ依存情報がない

はてなブックマークに仮にOPMLみたいなツールがあって、簡単にdel.ici.ousなどの他のソーシャルブックマークに移動できたとする。しかし、RSSリーダと同じような状況には陥らないと考えられる。

それは、自分でつけたタグやコメントなど「はてな」に依存する情報が非常に多く、簡単に移行できないからだ。100歩譲ってタグやコメントも同時に移行できたとしても、はてなAPI/同じIDでの認証/ダイアリー/など他のはてなツールとの依存関係を考えると、やはり移行障壁になる。

RSSリーダに話を戻すと、RSSリーダにはこのような依存情報がない。RSSを取り込み、更新情報を表示するという基盤機能以外になにか移行を咎めさせるような機能がないのだ。これらは移行を簡単にさせる理由となっているように思える。

3.どのRSSリーダも操作性が似ている

細かい点を言えば、操作性の違いは多くあるかもしれないが、RSSリーダというシンプルなツールゆえに、大まかに言うとどのリーダも操作性は似ている。軽自動車からスポーツカーに乗り換えるといった手間や面倒は必要なく、簡単に移行できてしまう。

4.使っている層がリテラシーが高い層である

RSSリーダとブラウザは似ている。ブラウザもお気に入りをインポート/エクスポートすれば簡単に移行できてしまう。IEからfirefoxに乗り換える人は後を絶たない。しかし、大きく違うのは、ブラウザのユーザ層がオールジャンルなのに対して、現在のRSSのユーザ層はネットリテラシーの高い層だ。

一般ユーザほど保守的なのは有名で、使いなれたIEをFirefoxに移行するのは困難な作業だ。それに大してネットリテラシーの高い層ほど新しいもの・便利なもの好きで簡単に乗り換える傾向がある。

ブラウザにしても、リテラシーが高い層に限って言えば、Firefox率が非常に高いことからもうなずける。
こと、RSSリーダも同様に、ユーザ層から簡単に移行してしまう人が多いといえるかもしれない。

5.すばらしいリーダだから

最後は当たり前というか、大前提であるが、livedoorRSSリーダが誰からみてもすばらしいリーダであるということだ。これにかんしては当たり前なので、深くは追求しない。

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こういう風に考えていくと、RSSリーダでビジネスをしていくのは非常に難しいと考えざるを得ない。いくらRSSから広告を最適化する技術がでてきて、ビジネス化のきざしが見えたとはいえ、こうも簡単に移行できてしまう環境でビジネスをするとなると、よくよく戦略を練る必要がある。

しかし、上記理由を逆説的に考えると、戦略は自ずと見えてくるような気がする。

まずリーダとして、根本の機能を充実させるのは当たり前として、なにか移行できない依存情報、依存機能をつけるべきだ。(※上記2より)

次に、RSSリーダ標準搭載のIE7が登場して一般ユーザ層がRSS収集はブラウザでやればよいと認識する前に、一般ユーザ層を取り込むこと。これにより、リーダを長くつかってくれる率が高くなる可能性がある。

そして、リーダ単体での利益追求はせずに、リーダ+○○(はてな型)という風に考え、ビジネス展開するほうが現状を見ると吉と考えざるを得ない。

楽天リサーチの統計によると、日本でRSSリーダを使っている人は5~10%程度だという。キャズムを超え、一般化するのか。それとも、ネット好きが使う1ツールになるのか。さらには、livedoorリーダを超えるリーダが登場して、またもや簡単に移行されてしまうのか。非常に興味深い。

今後、RSSリーダに限らず、ツールとデータが切り離され、簡単に移行できる環境になっていくと考えられる。そんな時に、現状のRSSリーダで起こっていることの分析は将来のよい勉強になるはずだ。

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